熊本地震との一年の歩み

熊本地震との一年の歩み

一年前の自分が何をしていたのか全く思い出せない、過去と断絶した一年になりました。

 地震直後、酒蔵は倒壊、貯蔵酒は亡失、瓶詰めラインは寸断、水道は断水と絶望的に状況に陥り茫然自失となった場面から記憶は始まってます。
すべての注文は止まり、蔵の中は外と同じくらい雨が降り壊れた壁や屋根の崩落で足の踏み場もなく、買掛、給料の支払いは、と奈落の底に突き落とされた様でした。
 
 出勤し黙々と現場を片付け始めた社員、雨漏りを心配して農業用のビニールシートを持ってきてくれた農家さん、あらゆる媒体での溢れかえる激励の声、全国各地からの応援のご注文、金融機関からの素早い資金繰り対応、行政からの復興支援補助金のお知らせ等々前の見えない中多くの方から温かい手を差し伸べて頂きました。
 
 腹をくくりました。皆様からの温かい手にすがりついてなんとしても元に戻すとの思いで、全国各地に販売に行き、金融機関を拝み倒し、手紙を書きメールを送りSNSに投稿しマスコミの取材を受け、地元工務店をおどし(酒が出来んかったら地元の米農家、酒飲みが何するかわからんぞー)、膨大な書類を作り、社員と一丸になってこの一年走り続けてきました。
 
 まだまだ酒蔵や機械の修復は三分の一も進んでいません。しかし地震に耐えて実ってくれた酒米を蔵に運び、新酒を醸すことが出来ました。酒屋冥利に尽きます。復興までまだ多くの年月がかかります。単に元に戻すだけでなく、応援頂いた皆様にお慶び頂ける様よりよい通潤にして参ります。
 これまでの御支援に心から感謝して、これからもお見守り頂ければ幸甚です。

平成29年4月14日
通潤
12代目蔵元 山下泰雄

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